イワカワシジミ
沖縄から八重山諸島、奄美大島などに生息するイワカワシジミは、この地方に採集に行かれる方はぜひネットインしてみたい蝶である。
♂の翅表の青、裏面の鮮やかな緑色はいかにも南国の蝶という感じである。
この種は食樹であるクチナシに執着する傾向が強いと思われているが、これは産卵期の♀にみられる傾向である。
面白いのは、というか、これはまだ私の見識のなかでは研究不足であるが、クチナシの木としては大きな部類になる産卵木であっても同時に複数の♀は見られず、常に1匹しか絡んでいない。
沖縄や石垣島、奄美大島など毎年のように行く地は、何処ならクチナシの木があるか、何処の木には産卵しているかなど把握している。
クチナシの実から卵、幼虫、サナギを探すのだが、枝を手元に引き寄せ、探しだす前には枝先を目で確認し、さらに先端まで竿で軽く叩いて成虫が止まっていないか様子をみる。
こんな時、止まっていたイワカワシジミが飛び出すのは決まって1匹のみで、私は複数止まっていることに出会ったことがない。
しかし、時間をおいて再度行くと、次の個体が飛来していることは少なくない。
当然産卵に訪れているのであろうが、クチナシの木に絡んでいるのはこの産卵の時間帯だけだと思われ、基本的には天気のよい昼前後に比較的飛来している成虫がみられるが、時には雨中、と言っても、湿度が下がり、雨があがりそうな状況でも産卵に飛来する個体もみられる。産卵適期の♀はクチナシの木に執着している傾向があり、産卵時以外でもクチナシの木の周囲の樹木に絡んでいる。
この周囲の樹木に絡んでいる時は、枝先を軽く叩くと複数のイワカワシジミが飛び出すことも少なくない。
交尾が終わり、産卵が終わった♂♀はクチナシの木から離れてしまうので採集は非常に難しく、ほとんど偶然の出会いでしかない。
本当に採りたいという執念があれば諦めることはない。
このイワカワシジミにはアグハチョウ類などに多くみられる習性同様に蝶道をもつが、アゲハ類とは異なり、小さく、ぎこちない飛び方で飛翔するイワカワシジミの空中戦は難しい。
ただ、アゲハ類と異なることは、アゲハ類の場合は蝶道を探しても、そこを通るのみで静止しようてしないので空中戦になるが、イワカワシジミは目的地があり、必ず静止する場所がある。
偶然イワカワシジミ を見つけネットインしたら、大半の人は喜び、また、採りたいと、次の個体を求めて歩きながら探し求めてしまう。
1匹ネットインしたら1時間は粘る。
これが執念で、1時間粘って飛来しなければその場は目的地ではなく、本当に偶然の産物であったと諦める。
日数も、時間も限られている採集旅行中にそんなことができるか!と思われるだろう。
そこで重要はポイントをひとつ。
樹木の枝先など高所でのネットインなど叩きだしでの採集地は複数の飛来場所ではないのですぐ移動しても大丈夫。
忘れないで頭に入れておいてほしいのは、下草に静止している場所、飛翔していた個体が静止した場所。
特に林道沿いや耕地の脇など必ず片方に根元から空間のある、また、一列に並ぶように生えているススキは好んで飛来場所としている傾向がみられる。
こんな場所の周囲を注意深く探索すると30〜50m以内に大小複数のクチナシの木が自生していることに気がつく。
ススキとは限らないが同じ下草が一列にならぶような環境でネットインした時は偶然であっても、早い時には次々と、遅くても20〜30分間隔では飛来してくるので、このような場所は確実にイワカワシジミの飛来場所であり、粘るだけ成果があがる。
次回は卵〜サナギの 採集、飼育法!
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