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2012年11月 2日 (金)

チョウセンアカシジミ!

山形県、岩手県のチョウセンアカシジミは天然記念物指定で採集は禁止されており、採集可能地域は 新潟県のみである。

新潟県のチョウセンアカシジミは新潟県在住のF氏、S氏による放卵がメインで、かなりの数があちこちに放卵され、かなりの確率で生息が確認されている。
放卵範囲も長岡市、三条市、見附市、加茂市、弥彦村など広範囲に渡っている。

東北地方では昔、チョウセンアカシジミの食樹であるデワノトネリコは人家や耕地、墓地周辺から農道沿いなどに一列に植えられ、稲を刈り取ったあと天干しするために使用したことから、新潟県でも至る場所でみられるが、チョウセンアカシジミが生息するには極端な環境条件がある。
本来花などから吸密することがなく、水分のみで生きているチョウセンアカシジミだから、周囲に吸密源の草花は必要ないが、終齢幼虫の一部は枝先の先端の葉を葉ごと切り離し、根元に落ちてから蛹化する生態もみられる。
そのために、デワノトネリコが生えている根元に1m幅以上の草つきがないと生息しない。
これはミドリシジミなど他のゼフィルスにもみられる習性である。
そのため、発生初期に採集に行くと幹の根元や周囲の草に羽化したばかりの翅を伸ばしている個体がみられるのは地面の草地で羽化した個体である。

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現在私が知る範囲では生息地は37ヶ所あるが、これらの条件に当てはまり、放卵されたと思われる生息地は21ヶ所だ。残りの16ヶ所は山裾の単木であったり、通常気がつかないような山中であったり、放卵地域からかけ離れた地域であったりと、とても放卵されたものとは考えられない生息地がある。

新潟県のチョウセンカシジミは色彩的に3タイプがみられ、
ひとつは完全な山形県タイプ。
もうひとつは全体的に山形県タイプよりは明るく多少ボケたタイプ。
残るもうひとつは両タイプの中間型である。

私の見識では、新潟県には昔から生息していたが、田畑の拡張整備、それに伴う農道整備や、さらに農機具の進化により、稲の天干し作業も行われなくなり、大半のデワノトネリコは伐採、根こそぎ始末されてしまった。
当然チョウセンアカシジミの生息地は分断されてしまった。
その後は局地的にわずかに生き延びたのであろう。
この生き延びたボケたタイプこそが本来の新潟県タイプなのである。
その裏づけは、これらのタイプが生息する地は山裾の単木であったり、山中の墓地周辺での数本しかないデワノトネリコであったりと、全く放卵などと縁のない場所なのである。

両タイプの中間型がみられるのは人家周辺がほとんどで、比較的人家周辺のデワノトネリコは伐採されることもなく、大木に生育しているため、格好の放卵場所として選択されている。

多分わずかに生き延びていた新潟県タイプとの交尾で中間型が発生し、今ではひとつの型として代を繰り返しているのだろう。

ただ、心配なのは、殺到する採集者の中には、畑に踏み込んだり、人家の庭に無断で侵入するなど、地元の人たちには採集者を毛嫌いする人も少なくなく、家の周囲や、耕地周辺のデワノトネリコを伐採してしまった人がかなりいる。
新潟県でしかネットが振れないチョウセンアカシジミであるから、地元の人たちに迷惑をかけないようにすることは、この種に限らず、蝶採集の第1歩であり、 採集禁止活動も一部でははじまっていることから、十分配慮しての採集を心掛けたい。

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