オオイチモンジ!忘れられない光景 パートⅢ


新しい生息地を見つけると、2年以上の発生を確認したうえで[関東甲信越の蝶採集・観察マップ]に記載し、入門編、秋山郷特集、ギフチョウ特集[212産地]などを含み、現在に至るまでに20冊以上を発行してきた。
これらのマップにより採集ブ―ムになった種も少なくない。
当然新生息地を探索するには習性などを観察、熟知しなければ探し出すことはできない。
特に難しいことは、地図や他種の採集時の道中などに気になった場所など狙いをつけて調査するが、生息を確認するのは簡単。
そこに狙う蝶がいればいいわけだから! あとは食草や食樹が自生し、吸密植物が自生していればほとんど間違いなく生息している。
あとは年を跨いでの確認だけである。
逆に調査をしても出会えなかった場合だ。
しかも、食草、食樹なども自生し、環境も抜群の場所などでは、1〜2度の調査で[生息していない]と結論つけることはできない。
生息していないと結論ずけるには最低限3〜4年の調査が必要である。
私がオオイチモンジの生息地調査をはじめ、福島県、栃木県、新潟県、山梨県、長野県などの探索に年月をかけ、最後に探索したのが八ヶ岳である。
当時の八ヶ岳山麓で生息を確認した産地は15ヶ所以上にたっしていた。
オオイチモンジは必ず寝床と呼ぶ夜を過ごす樹木があり、私の知る範囲では食樹であるドロノキやヤマナラシであり、多くは柳の樹である。
発生初期の未交尾の間は食樹に絡んでいるが、交尾が、産卵が終わると食樹からは離れ、渓流沿いや周辺の柳の樹が寝床となる。
大半単木ではなく、柳林の端に位置し、片側に空間のある柳である。
このような柳を探すには、ヤマキマダラヒカゲやコムラサキ、エルタテハなどが頻繁に出入りしている樹を探し出すのだ。
柳林には時にはこのような樹が何本か見うけられることがあるが、林縁に位置し、比較的大木で樹液の出ている樹である。
その日は、早朝、まだ日の出前、それでも明るく、周囲もはっきり見える時間にオオイチモンジの寝床の柳の樹の前に到着。
樹の太い幹を見渡すと、翅を閉じ、身動きしないオオイチモンジの♀が目に飛び込んでくる。
生息地域で飛翔しているオオイチモンジを見ても、あっ!いた!という程度であるが、狙った樹、草などで見つける感動は オオイチモンジに限らず特別だ。
やった〜!と感激しながら観察を続ける。
幹に朝陽があたりだすのを待つのだ。
大木の梢に朝陽が当たりだすと、枝先に静止し夜を過ごした♂が2匹梢上空を旋回しはじめる。
朝陽が幹に差し込みだすと、熟睡していたオオイチモンジの♀もお目覚めの時間である。
先ほどまで翅を閉じて幹にとまっていた♀が翅を開閉しはじめる。
多少位置を変え、陽当たりの良い場所に移動した♀は翅を開き、太陽を身体いっぱいに浴びている。これを合図のように私の目は太い幹を隈無く探しだす。
しばらくすると、枝の付け根裏側より白い帯を誇るように翅を開閉しながらもう1匹の♀が這い出してくる。
いた!いた!と!
1〜2匹探し出すことは結構あることでみいっていると、また、少し上の幹を這う個体が!
なんだ!
今日めちゃくちゃいるぞ、と興奮覚めやまないうちに、次々と幹の裏側や死角から7匹ものオオイチモンジの♀が陽当たりの良い幹に現れわれたのだ。
なんということだ。夜を過ごしたオオイチモンジの♀は、朝陽が幹に当たりだすと、より早く朝陽の当たる場所へと、翅を開閉しながら幹を歩きだすが、まるでTV局のメンバーが同行し、撮影を知っていたかのようにオオイチモンジの♀が、私が1番とでも言うように翅を広げ、勇姿を誇らしげに見せている。
なんという光景だろうか。
TVの撮影者は信じられないと言いながらカメラを回し続けている。
同じ柳の林の端にあるもう1本の寝床を見に行くと、この柳にも2匹の♀が翅を広げて朝陽を浴びているのだ。
八ヶ岳山麓のみでなく、あちこちの生息地でオオイチモンジの寝床の樹を知っているが、これほど多くのオオイチモンジの♀がいたのははじめてであり、その後、何回か通ったがこれ以上の感動を味わってたことはなかった。
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