フタスジチョウ!奥只見の黒化型!
フタスジチョウは岩手県や北海道などの白帯が広く、明るい個体群、関東甲信越に生息する一般的なミスジチョウに類似している個体群と、大きく2タイプにわけられる。
しかし、新潟県の一部周辺に生息する個体群は、これらの個体群に属さない特異な個体群で、極めて局地的に生息し、上翅中室の白帯が消失し、他の白帯も細く消失気味になり、裏面は赤褐色が著しく発達するが、翅表は極端に黒い個体群である。
これほどの黒化型は他の地域ではみられない特異な地域変異である。
局地的な生息地域の中に完全な蝶道がみられ、通常一般的な生息地では樹木の枝先などを飛翔するが、この生息地の個体群は地面スレスレに飛翔する個体群である。
また、この地域の個体群は越冬幼虫を採集し、飼育すると黒い地色が赤黒褐色になり、既存の個体群とは別の個体群になってしまう。
東京とは温度差がかなりあることが原因かと思い、地元新潟の友人に飼育を依頼してみたが結果は同様であった。
しかし、終齢幼虫での採集、サナギ採集では東京に持ち帰って羽化させても全く変わらない黒化型の個体が羽化する。
通常フタスジチョウが飛翔していても追いかけてまでネットインすることがないが、この地域のフタスジチョウはわざわざ狙って採集に行くほどの個体群であり、はまると毎年の採集計画に入れ込むほどの魅力的なフタスジチョウである。
豪雪地帯であるこの生息地では発生状況をつかむのが非常に難しいが、長岡市周辺のチョウセンアカシジミ採集時や、南会津地方のウスバシロチョウ黒化型の採集時の帰り、6月中旬に立ち寄り、発生状況をつかむのが最良である。
この地域ではフタスジチョウに限らず、イチモンジチョウやホシミスジなどミスジチョウ類には極端な黒化型の個体が出現するが、フタスジチョウのように全個体が黒化型になることはない。
この黒化傾向がみられるのは長野県の秋山郷でもみられ、秋山郷ではミスジチョウ類の個体数が極端に少ないが、他地域のミスジチョウ類より明らかに大型化する珍しい地域であり、特にアサマイチモンシ、ホシミスジは必ずネットインしたいほど黒化が著しく進んだ個体にであえる。
一般的な傾向として北海道大雪山麓のオオイチモンジに代表される黒化型の出現は豪雪地帯での低温の影響と考えられるが、青森県や岩手県でのウスバシロチョウ、北海道や岩手県でのフタスジチョウなど白化が極端な個体群など、豪雪地帯では黒化か白化が著しく発達した両極端の発生がみられ、同じ豪雪地帯で何が影響しているのか原因はわからないが、神秘な世界であることは事実である。

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