アリと共生する蝶・パ―トⅤ ゴマシジミ
7月中旬から9月初旬まで姿をみられるゴマシジミは通称ヤマゴマと呼ばれる亜高山地帯に生息する個体群から発生が始まり、徐々に低標高地帯へと発生が続く。幼虫は中齢期までバラ科のワレモコウの花を食べ、その後シワクシケアリによって巣中に運ばれ、同種のアリの幼虫を食べて成長する。 幼虫で越冬。
ゴマシジミは地域変異が著しく、4〜6の亜種に区分されている。
生息域は東北地方に代表される低地の湿原から亜高山まで、北海道から九州まで幅広いが、個々の産地は非連続性が強い。関東甲信越地方では耕地周辺の開発、伐採地の激減などで生息地が減少してしまった。
関東甲信越地方での最大の生息地であった山梨県の富士山麓、自衛隊北富士演習場は、オミナエシやキキョウ、ゴマシジミの食草であるワレモコウの花も業者に盆花として、狙われた地域は一網打尽に刈り取られてしまうことから、産卵直後のワレモコウが切り取られ、一気にゴマシジミも減少してしまった。
それでも現在狙って間違いなく採れるのはこの演習場である。
山梨県には北杜市、甲州市、韮崎市、甲府市、富士吉田市、富士河口湖町、笛吹市などに細々と生息地が点在している。
長野県には諏訪市霧ヶ峰高原と松本市などのほか八方尾根など亜高山地帯に生息しているが多産地であった小諸市の赤井、山田牧場、山梨県の日野春、乾徳山の大平牧場、茅ヶ岳山麓などは開発で消滅してしまった。
しかし、ゴマシジミの生命力は強く、林道沿いや林縁などで種の保全を保っていたわずかな個体が、ある年伐採地にいきなり多数の個体を発生させることがあるように、毎年気になる伐採地などは調査が必要な種類である。
蝶屋主催のゴマシジミ採集ツアーは8月に発生状況をみながら開催。
長野県松本市は一泊、山梨県は日帰りツアーを予定している。
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