ギフチョウ山梨県
今日は狂言の人間国宝・山本東次郎先生をギフチョウ採集の案内。
以前山梨県のギフチョウを案内した時は狙った産地では全く見ることもできず、転戦した産地で大当たりし、先生は日帰り予定を急遽富士宮市に泊まり、翌日も採集したほどである。この当時は南部町や身延町、下部町などにギフチョウ生息地が点在し、採集は生息地さえ知っていればさほど難しいこともなかった。
しかし、富沢町と南部町が、身延町と下部町と合併し、両町ともギフチョウは採集禁止となってしまい、最近の山梨県で採集可能な地域は市川三郷町しかない。
しかし、この市川三郷町は生息地、個体数ともに少なく採集が極端に難しい地域である。
私の知り得る生息地を頭の中で回転させ、1産地ごとにチェックするが、間違いなく採集可能な生息地がなかなか思いつかない。
最終的に残った生息地は急登の登山道を1時間弱歩かなくれば登り着けない非常にハ―ドな生息地。
こんな厳しい行程の生息地だから、以前から採集者も入らす、最近は話題にさえならない生息地であることから絶対に今でも生息していると決めこむ。
行き先が決まったのはよいが、私は10年以上採集に行っていない生息地であり、もし採れなかったらという不安は拭いきれないものの、ここ以外に可能性のある生息地が思いつかないのだ。
マグロを求めて北は津軽海峡から南は先島諸島周辺、魚を求めて世界各地を釣り行脚している、釣りのプロ田原さんに車を出してもらい、希少生息地では採集者が多いほどギフチョウと出会えるチャンスが多くなることから、若く歩き回れる小林君を連れての四人パーティーで狙う。
6時に集まり、中央自動車道などを順調に走り、現着8時半 。
それぞれが準備をし、いざ登山開始となったが山裾は荒れはて、登山口さえわからない状況である。
以前はきちんとした登山道があり、一本道できつい登りであったが、その登山道がない。
方向を決め藪こぎをしながらの登山開始である。
藪こぎの大変さと、急斜面で足が滑り、悪戦苦闘しながら、さらに、帰りの道標をつけながら慎重な登山が始まる。
山裾のブッシュを抜け、粗林になり、なんとなく獣道のような登山道らしきが見分けられる状況になり、山頂を目指せる辺りで、登りに極端に弱い私は、田原さんに先導してもらい、他のメンバーに先に行ってもらうように話す。
みるみるうちに三人は見えなくなり、私はマイペ―スで登る。
3人が登りつけば山頂の周囲にある空間で大半目に飛び込んでくるギフチョウは誰かが狙い打ちできることから、私は山頂近くの多少空間の陽当たりの良い斜面に陣取りながら一休み。
山頂についているであろう小林君に電話で状況を聞くと「もう2匹採りました」と嬉しい報告が。
でも先生はまだ採れていないというが、とにかく生息が確認されたことで、時間の問題で先生も採れるだろうと、1時間弱のきつい登りも報われた。
斜面の下方、地面スレスレを、食草を探すように飛翔する大きな♀が目に飛び込んできた。
足場の悪い、というより落ち葉ごと滑り落ちるような急斜面を下るが、大きなギフチョウの飛翔地には追いつけず下方へと消えていった。
それでも目撃したことで一気に気持ちが高ぶってくる。
最初に狙った多少先に、さらに陽当たりがよく、多少平坦な、採集しやすそうな場所があり、様子を見に歩き出した瞬間、その場の地面近くを飛翔する個体を発見。
やった―!とすでにネットインしたつもりで、急いで近ずくと、ギフチョウは一気に周囲の高い樹木、サワラの梢へと舞い上がり、冠部の枝先を飛翔して静止したまま再度降りて来ることはなかった。
その後もわずかに飛翔する個体を見つけては駆け寄るが、いずれも樹木の上に舞い上がりネットさえ振れない欲求不満な状況が続く。
目に飛び込んでくるギフチョウは全部地面スレスレにわずかに飛翔しては高所に舞い上がってしまうという繰り返しで、地面から1m前後の空間を穏やかに飛翔するギフチョウがいないのだ。
見かける個体は飛翔からみてもすべて♀である。
ギフチョウ採集を長く続けているが、稀に高所に舞い上がってしまう個体はいるが、すべての個体が舞い上がってしまうということは経験がない。
この習性は♀が朝方、夜を過ごした杉やサワラなどの枝先から舞い降り、地面で日光浴をし、体を温める時に見せる習性であるが、再度高所枝先に舞い戻り静止する動きは、気温があがらなかったり、強風の時にみせる習性である。
しかし、今日は気温も高く、風もない最高のギフチョウ日和であり、全く考えられない行動である。
私はその後もネットインできないまま、小林君に電話をすると「はい、4匹になりました」と好調に成果をあげている。
なかなかギフチョウとの出会いに恵まれなかった先生も「柿澤さん見てと差し出された個体は大型な春のキアゲハと見間違えるような、物凄く大きなギフチョウの♀である。
ついに、それも特大な未交尾の♀を先生がネットインした。その後もメンバーは一喜一憂しながらの採集が続いたが、最終的に私は空間を飛ぶ個体を見ることもなく、当然ネットを横振りすることもなく、採集は地面にネットをかぶせるだけという状況であった。
みんなの採集数は楽に二桁を越したが、♂は1匹のみで残りは全て♀、しかも半分以上は未交尾である。
♂の発生が早く、交尾を済ませた♂はすでに散らかり、後日羽化した♀は交尾できないまま♂を探し求める行動が地面と樹木の高所を行き来する変則な行動とも考えられる。
昼前後から時々強風が、さらに花曇りが繰り返し、日差しが差さない時間帯があったりと、ギフチョウも見られなくなり、1時には下りについた。
10年ぶりの産地を訪ね、厳しい登り、足を滑らし何回滑り落ちたかという危険な行程での採集であったが、同行者の協力で全員ネットインでき、無事下山もできた。
車中で先生曰く「ギフチョウは本当に楽な採集か、物凄く厳しい採集かのどちらかだね」
という人間国宝ギフチョウ採集紀行でした。
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