ウラジャノメ
ウラジャノメほど、新鮮な個体と飛び古した個体との差が極端な種類も珍しい。
日本のウラジャノメは3亜種に区分されている。
1)利尻島を除く北海道に分布し、後翅裏面の白帯が幅広く安定している亜種。
jezoensis[Matsumura]
2)利尻島に分布。小型で翅表の眼状紋は小さく、周囲の黄色環は鮮明になる。 oniwakienin Y.Yazaki
3)本州に分布。後翅裏面の白帯は細い個体が多いが、中国山地産は白帯は幅広くなる。
achinoides[Buter]
と区分されているが、福島県いわき市の矢大臣山、高塚山、鬼ケ城山の阿武隈三山の個体群は、北海道亜種同様に後翅裏面の白帯は幅広く安定した個体群であり、阿武隈亜種としてもよいほど特異な個体群である。
矢大臣山はゲ―トから山頂目指して進むと、山頂下に鉄塔ライン近くの草地があり、この辺りの林道沿いや林縁に多い。
鬼ケ城山は、[いわきの里・鬼ケ城]からクサリ場などの岩場を急登すると、尾根道沿いの林内空間に生息し、所々に溜まり場的な好ポイントが点在している。
高塚山は駐車場周辺や、駐車場からの登山道沿いに生息するが、阿武隈三山の中では1番個体数は少ない。
この三山でむしろ貴重な蝶はウラジャノメよりヒメキマダラヒカゲだ。
ヒメキマダラヒカゲと聞いて想像するのは、キマダラヒカゲより小型で樹木に絡み、個体数の多い蝶であると思い浮かべるであろうが、この地域の個体群はキマダラヒカゲより大型で、特に♀は極端に大きく、めりはりがあり、一瞬この蝶はなんだと目を疑うほどの個体である。
ウラジャノメより極端に個体数も少なく、8月のお盆過ぎから発生が始まり、採集はウラジャノメよりかなり難しい。
関東エリアでのウラジャノメ生息地として特異な個体群は、埼玉県秩父市の武甲山で、大型で他地域の個体群と比較すると黒化傾向の強い個体群であるが、杉林内を一時間前後の登りは厳しいものがある。
多産地としては長野県岡谷市の鉢伏山で、これ程群れている生息地も珍しい。
地域変異も見られ、 この種にはまると制限なく採集意欲を掻き立てられるが、特に個体変異がみられるのは北海道旭川市の旭川動物園を見おろす旭山の山頂尾根道直下の空間に生息する個体群で、裏面眼状紋の黒点内にある白点が消失する、いわゆる[眼無しウラジャ]と呼ばれる個体が生息する。
すでに発生している生息地もあるが、これから7月中旬にかけて最盛期を迎える生息地が多く、標高1000m前後からでの採集時には狙ってみたい種類であるが、この種の採集には情報収集をし、発生初期の新鮮個体を狙いたい。
お勧めは長野県霧ヶ峰高原周辺で、同時期にコヒョウモンモドキ、アサマシジミ、コヒョウモンなどと一緒に採集できる。
また、山梨県海ノ口周辺ではヒョウモン類やアゲハ類なども多く、ウラジャノメと一緒に楽しめる地域である。
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