2013年6月29日 (土)

オオイチモンジ

オオイチモンジ
7月の声を聞くと、夏山!高山蝶の季節である。
高山蝶=天然記念物=採集禁止!
という方程式ができているが、これは長野県などに限られた範囲であるが、ダメと言われると採りたくなるのが私?
いやいやみんな同じだと思われるが。   で、採るの? と聞かれれば、採るよ!と即答!
ただ警察沙汰になるのはイヤだから、条例のない地域で探す。
私が高山蝶の中で1番好きな蝶はクモマベニヒカゲだが、これは基本的に本州では八ヶ岳山系の一部、山梨県側で採集可能な生息地があるが、今の私には登山するには無理があり、採るのは北海道。
本州でダメだから北海道なのだが、北海道のクモマベニヒカゲを採ると、これが本州とは比較できないほど渋く、魅力的ではまってしまっている。
オオイチモンジに話を戻すが、私が初めてオオイチモンジを採集したのは長野県の扉峠である。
小学生の低学年の頃、は三才の時に誘拐れ、諏訪市の警察から消防士までもが捜査に加わる程の大騒ぎになったという過去があることから、蝶採集もひとりでは当時の汽車に乗ることは駄目、バスも諏訪市内から霧ヶ峰までと制限されていたことから、行きたい美ヶ原には和田峠を抜け扉峠経由で歩いていかなければならなかった。
何回もチャレンジしたが、いつも時間の関係で扉峠から引き返すというパターンであった。
この時も扉峠で採集して帰ろうとネットを振っていると、林道の下の沢筋から生える柳の木の冠部が丁度林道に立つ私の目線くらいになり、その冠部の周囲を大きなイチモンジチョウが旋回している。
デカイイチモンジチョウだと夢中でネットを振り何匹かを採ったが、とにかく蝶を採るのが好きで休みにはいつも山に採集に行っていたが、まだ図鑑も真剣に見たことがなく、この時点ではオオイチモンジだとは気がつくこともなく、とにかく大きなイチモンジチョウに夢中になっていた。
何匹か採ると大きなイチモンジチョウもたまにしか姿を見せなくなり、おにぎりを食べていると、林道の低空をバカデカイ、やたら太い白い帯があるイチモンジチョウがゆっくりと飛んでくるのだ。
今まで見たこともない、デカイ、白いイチモンジに目は釘付けになり、射程距離に入った瞬間、思い切りネットを振っていた。
ネットの中で暴れるこの見たこともない蝶を傷つけないように取り入れ、手にして見ても、なんだ、このバカデカイイチモンジは?と興奮しながら三角紙に入れることさえ忘れて見惚れていたほどである。
子供ながらに、もっと採りたいと時間が許す範囲粘ったがこの日はこれが最後であった。
帰りのバスの中で三角ケ―スから取り出して、笑いを、歓喜の叫びをこらえながら、長い時間見とれていた。
バスが駅に着くころになって初めて、もしかしたらオオイチモンジ?という考えが頭に浮かんだ。
という想い出深いオオイチモンジ初ネットがあり、この種の生息地の探索は随分長年やってきたが、現在採集可能で生息地がわかっているのは岐阜県の高山市日和田高原や新穂高温泉郷周辺では採集できる可能性が高い。
極端に個体数が少なく採集が難しい生息地であるが、私が好きで狙うのは福島県檜枝岐村。
この地域には新潟県との県境、只見川に架かる金泉橋周辺、実川流域から七入、舟岐川流域などに生息地がある。
昨年はこの地域にオオイチモンジを求めて行っていないが、一昨年には上空を飛翔する♀を目撃している。

オオイチモンジには寝床となる樹木があり、大半柳であるが、発生後、交尾をするまでは発生木から離れないが、産卵が終わると♀も発生木から離れ、夜は寝床となる木で夜を過ごすようになる。
沢筋などに生える柳でキマダラヒカゲやコムラサキ、エルタテハなどが頻繁に出入りする柳は大半樹液が出ていて、このような柳が寝床として利用される。
寝床の柳の枝先には♂が夜を過ごし、♀は幹や太い枝に静止して夜を過ごす。
朝陽が当たりだす、時には日の出前から♂は冠部を旋回しては枝先に止まる行動繰り返し、♀は飛翔することなく幹や枝を這い回る。   その後♂は7時前後から活発に冠部や枝先を旋回するが♀が活発に飛翔を始めるのは9時前後からであり、1番活発に♀が活動する時間帯は午後2時を過ぎてからである。

オオイチモンジの生息地内には必ず柳林があり、この林の端に自生し、なおかつ片側に空間があり、キマダラヒカゲなどが出入りしている樹液の出ている柳を探しておくと、日中でも♀が集まる傾向がある。

オオイチモンジ採集に欠かせないのがトラップであり、効果的なトラップはパインを輪切りにし、さらに小さくし、バナナは皮のまま三つくらいに切り、焼酎で浸ける。
さらにあればマレーシアの調味料、ベラカンを削って混ぜたら♀も大好物だ。
なければバナナだけでも効果はある。

2013年6月23日 (日)

キベリタテハ

驚異のキベリタテハ!
このキベリタテハは越冬?

今年の発生個体?
早すぎるよね!
???と考えるだろう。
これは2012年9月5日長野県伊那市釜無山麓・東谷 での採集品である。

採集目的の蝶は展翅したが、キベリタテハなどついでにネットインした蝶は冷蔵庫で寝ていて、時間ができた時展翅したり、三角紙で欲しい人がいれば譲ったりしている。
今日は久しぶりの休みで冷蔵庫の整理をしていた。
キベリタテハのタッパ―がふたつあり、 北海道から送られたタッパ―には40頭、長野県のタッパ―には28頭が入っていたが、なんと写真の1匹が動き出したのだ。
吸蜜どころか吸水さえもせず、三角紙に入れられ、全く動けない状況で9カ月と20日間、
なんという生命力。 ただただ驚くばかりである。

キベリタテハやクジャクチョウ、シ―タテハなど、同じ地域で生息する蝶は越冬場所も同じ場所を選ぶようで、ずいぶん前になるが、越冬している蝶をみたいと言われて、大菩薩に案内したことがある。この時、介山荘から大菩薩嶺へと向かう尾根道沿いに大きな岩が重なりあうような岩場があり、重なりあう岩と岩との隙間がかなりあり、ひとつひとつ覗いていくと、ひとつの隙間に集団で立ち並ぶように静止?仮死状態の塊を発見。
廃屋になった作業小屋などで1〜2頭の越冬個体は見たことがあるが、これ程集団越冬している様を見たのは初めてである。
さらに驚いたのは比較的横巾のある隙間には、よくみるとほかにもあとふたつの塊がある。
薄暗く、冷気を防ぐためか、それぞれの塊は比較的奥に位置し、判別しにくいが、懐中電灯で照らし出された塊をみて絶句!
小さな光の先に照らし出された塊はキベリタテハ、クジャクチョウ、エルタテハ、さらに小さなシ―タテハの塊が見いだされたのだ。
しかも塊は色々な種類が混ざることなく、それぞれが1種類ごとの塊なのだ。
それも寒い時に人間が身を寄せ会うように、隙間のないくらい体を寄せあうように塊になっていた。 一般的にキベリタテハやコヒオドシのような上昇蝶は、発生地の標高1000m前後からある程度集団で標高をあげていく。
キベリタテハは7月下旬から8月中旬、9月初旬くらい、大まかに三回くらいに分かれてダラダラ発生し、基本的に9月下旬前後には再度標高1000m前後の発生地に戻り越冬するが、最後に発生する個体群は尾根沿いでキリンソウなどから吸蜜し、そのまま標高を下げずにいる個体が岩場の隙間に集まっているのだろう。
それから越冬したとして、越冬態勢で寝ている月日は10月から4月一杯としても約半年間。
冷蔵庫で寝ていたキベリタテハは10カ月弱。
信じられない生命力にただただ驚くばかりであったが、6月などに極端に新鮮で破損もない、羽化個体と思えるキベリタテハをネットインすることがあるが、もしかすると、最盛期に何かの影響で越冬態勢に入り、そのまま10カ月前後寝たままの個体が自然界でもあるのではないだろうか。

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ウラジャノメ

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ウラジャノメほど、新鮮な個体と飛び古した個体との差が極端な種類も珍しい。

日本のウラジャノメは3亜種に区分されている。

1)利尻島を除く北海道に分布し、後翅裏面の白帯が幅広く安定している亜種。
jezoensis[Matsumura]
2)利尻島に分布。小型で翅表の眼状紋は小さく、周囲の黄色環は鮮明になる。 oniwakienin Y.Yazaki
3)本州に分布。後翅裏面の白帯は細い個体が多いが、中国山地産は白帯は幅広くなる。
achinoides[Buter]

と区分されているが、福島県いわき市の矢大臣山、高塚山、鬼ケ城山の阿武隈三山の個体群は、北海道亜種同様に後翅裏面の白帯は幅広く安定した個体群であり、阿武隈亜種としてもよいほど特異な個体群である。
矢大臣山はゲ―トから山頂目指して進むと、山頂下に鉄塔ライン近くの草地があり、この辺りの林道沿いや林縁に多い。
鬼ケ城山は、[いわきの里・鬼ケ城]からクサリ場などの岩場を急登すると、尾根道沿いの林内空間に生息し、所々に溜まり場的な好ポイントが点在している。
高塚山は駐車場周辺や、駐車場からの登山道沿いに生息するが、阿武隈三山の中では1番個体数は少ない。

この三山でむしろ貴重な蝶はウラジャノメよりヒメキマダラヒカゲだ。
ヒメキマダラヒカゲと聞いて想像するのは、キマダラヒカゲより小型で樹木に絡み、個体数の多い蝶であると思い浮かべるであろうが、この地域の個体群はキマダラヒカゲより大型で、特に♀は極端に大きく、めりはりがあり、一瞬この蝶はなんだと目を疑うほどの個体である。
ウラジャノメより極端に個体数も少なく、8月のお盆過ぎから発生が始まり、採集はウラジャノメよりかなり難しい。

関東エリアでのウラジャノメ生息地として特異な個体群は、埼玉県秩父市の武甲山で、大型で他地域の個体群と比較すると黒化傾向の強い個体群であるが、杉林内を一時間前後の登りは厳しいものがある。
多産地としては長野県岡谷市の鉢伏山で、これ程群れている生息地も珍しい。
地域変異も見られ、 この種にはまると制限なく採集意欲を掻き立てられるが、特に個体変異がみられるのは北海道旭川市の旭川動物園を見おろす旭山の山頂尾根道直下の空間に生息する個体群で、裏面眼状紋の黒点内にある白点が消失する、いわゆる[眼無しウラジャ]と呼ばれる個体が生息する。

すでに発生している生息地もあるが、これから7月中旬にかけて最盛期を迎える生息地が多く、標高1000m前後からでの採集時には狙ってみたい種類であるが、この種の採集には情報収集をし、発生初期の新鮮個体を狙いたい。
お勧めは長野県霧ヶ峰高原周辺で、同時期にコヒョウモンモドキ、アサマシジミ、コヒョウモンなどと一緒に採集できる。
また、山梨県海ノ口周辺ではヒョウモン類やアゲハ類なども多く、ウラジャノメと一緒に楽しめる地域である。

2013年6月13日 (木)

キマダラルリツバメ

キマダラルリツバメ


キマダラルリツバメ

キマダラルリツバメ
キマダラルリツバメの発生時期が近ずいてきた。
山梨県、長野県と関東甲信越エリアには生息地が点在しているが、採集するなら福島県がお勧めである。
福島県では三島町は条例で採集禁止されている。
会津美里町には3ヶ所、柳津町12ヶ所、三島町15ヶ所、西会津4ヶ所 、喜多方市3ヶ所、金山町11ヶ所など至る所に生息地が点在しているが、大半桐の休耕地であり、畑も多く、農作業をしている方には挨拶をし、畑には踏み込まない注意が必要である。
キマダラルリツバメと言えば叩きだしと長竿で朝からこの地方のホストである桐の木を叩きまくっている人を目にすることが多いが、叩きだしは効率が悪く、テリトリー活動をする時間帯での採集が容易で成果もあがる。
朝から叩きだし採集をされるのなら、吸蜜活動に訪れるヒメジュオン、トラノオウ、ドクダミなどの白い花を見て廻ることである。   気象条件にもよるが、晴天なら8:30 am〜11:00amが♂の吸蜜時眼帯であり、♀の吸蜜時間帯は♂が活発にテリトリー活動をする3:00pm〜4:30pm の間である。
♀は発生木の根元周辺のヒメジュオンなどを好み、♂がテリトリー活動をしている時間帯に吸蜜活動をしている個体は♀だと思って間違いない。
また、テリトリー活動時には♀も活発に飛翔することがあり、行き来するテリトリー活動をしている中や周辺を直接的に飛翔する個体は♀であるから、飛翔法で判別はつく。
初めて採集に行かれる方はテリトリー活動をする場所がわからないだろうから、多少早めに狙った生息地に入り下見をしておく必要がある。
テリトリー活動する場所は桐の古木、さらに枯れ枝があるような桐が最低2〜3 本以上、できれば半円形のように生える古木の周囲の草地、土手、ススキなどが自生する窪地などが 狙い目であり、さらに自生する草木が他の草木より多少背の高い草木が最適である。
目の前でテリトリー活動が始まると、一見空中戦でネットインできるように感じ、空中戦をしたくなるが、空中戦をするのは卍活動時のみ。
テリトリー活動時には空中戦を挑まなくてもすぐ静止するのであせらず待つことである。
注意事項はもうひとつ。
テリトリー活動を開始する1時間前後前には叩きだしはしないことだ。
テリトリー活動の1時間前後まえになると、高い枝先に静止していた個体はテリトリー活動の準備のため、下枝に移動している個体が多く、この時間帯に叩くと周囲に散らかってしまい、通常テリトリー活動をする場所でもテリトリー活動は見られなくなる。   吸蜜活動をする花や、テリトリー活動をする場所は片方に必ず空間があり、吸蜜活動に訪れるヒメジュオンなどの花の位置は、咲き乱れる花の中心部などではなく、端に咲く花を選び、飛来して花に静止した直後、180度回転して静止し、いつでも前方に空間があり、飛び立てる体制での吸蜜活動に入る。

テリトリー活動はその日の気象条件に極端に影響され、晴天の場合は大半3時過ぎから活動を開始するが、余りにも天気が良すぎ、暑いと極端に遅くなり5時を過ぎることもある。
曇りの時は一時でも陽が差すと、昼過ぎなら直後にテリトリー活動をするが長続きはせず、また、陽が差した直後に活動を開始するなど何回か見られる。
全く陽が差さないような日は湿度がひくければ2時前後から活動がみられる。
また小雨模様の時には、通常テリトリー活動をする場所ではなく、葉の大きなウド畑、ジャガイモ畑など一面が比較的平らで止まりやすい場所での活動となる。いずれの時間帯のテリトリー活動でも、活動位置は目線より低く、小さな虫のように素早く行き来する個体が見えさえすれば成果はあがる。
今月と来月には私の店主催のゼフィルス&キマダラルリツバメ採集ツアーの開催もあり、初めてこの地方でのキマダラルリツバメ採集を狙われる方は、このようなツアー参加が1番効率もよく、また習性、活動などを把握できる。
参加希望者は詳細をお問い合わせください。
03*3954*4164 問い合わせ時間は、平日の19時〜21時。
FAX 03*5982*1991

2013年5月31日 (金)

国立公園

本格的な採集シ―ズンを迎える季節になり、採集禁止種の採集で毎年警察沙汰になっている例も少なくない。
1番気をつけなければいけないのが、今から最盛期を迎えるクモマツマキチョウの採卵である。
大半の人が山梨県や岐阜県、新潟県などでは条例もなく、国立公園内でも、特別保護区でなければ採集可能であるとクモマツマキチョウ採集に行くが、この時大半の人がミヤマハタザオなどに産みつけられている卵を探して採卵する人が多いだろう。
しかし、卵を採卵するということは、産みつけられている草ごと採取するわけで、これが問題。
国立公園内では特別地域と普通地域に区分けされ、特別地域の中の特別保護区でなければ昆虫類の採集は可能であるが、植物の採取は公園内は一切禁止であるということは意外と知られていない。     昨年山梨県南アルプス市の広河原でおきた植物採取事件もこの[自然公園法違反]を適応されている。
クモマツマキチョウを飼育するなら母蝶採集をし、ベンペン草などに比較的容易に産卵するので自宅での産卵を試みることをお勧めする。
ミヤマハタザオはクモマツマキチョウが生息しない、国立公園外にも多いので、何かの採集時に採取しての飼育を心がけたい。

国立公園は国が指定し、国が管理する公園で国定公園は国が指定した国立公園に準ずる公園で地方自治体が管理する。
国立公園は現在28ヶ所がある。

利尻礼文サロベツ、知床、阿寒、大雪山、釧路湿原、支勿洞爺、十和田八幡平、陸中海岸、磐梯朝日、日光、上信越公原、秩父多摩、小笠原、富士箱根伊豆、中部山岳、南アルプス、白山、伊勢志摩、吉野熊野、山陰海岸、大山隠岐、瀬戸内海、足摺宇和海、阿蘇九重、雲仙天草、西海、霧島屋久、西。
地方自治体による天然記念物・採集禁止種。
これからシ―ズンを迎える関東エリア。クモマツマキチョウ長野県全域
富山県全域
新潟県糸魚川市小滝オオルリシジミ
長野県全域
アサマシジミ
長野県北佐久郡代田町
ヤリガタケシジミ
長野県全域
ミヤマシロチョウ   群馬県全域
長野県全域
山梨県南巨摩郡、中巨摩郡、北巨摩郡、韮崎市
ミヤマモンキチョウ 群馬県全域
長野県全域
キマダラルリツバメ 福島県大沼郡三島町 神奈川県藤野町
山梨県北都留郡、南都留郡、大月市、都留市、富士吉田市
オオイチモンシ
群馬県全域
長野県全域
コヒオドシ
長野県全域
ベニヒカゲ
群馬県全域
長野県全域
クモマベニヒカゲ
長野県全域
タカネキマダラセセリ
長野県全域
市町村の合併により、旧郡などでの表示めある。

最近は携帯電話持参の人が大半で、ネットを持参しているだけで「怪しいやつ!何か密漁しているやつ」とすぐ警察に通報する人も多く、警察は通報されると必ず出向いて確認しなければならないようで、職務質問のうえ荷物検査など二時間前後時間をとられ、採集どころではなくなってしまうので、規制区域外でも登山道やハイキングコ―スなどの人混みのするような場所での採集には気をつけたい。

2013年5月19日 (日)

オオルリシジミ

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オオルリシジミ
オオルリシジミの発生状況を察知する材料として、私はニセアカシアの開花状況を参考にしている。
真っ白いフジのようなニセアカシアの花は、車窓からでも十分観察することができる。
クララを食すオオルリシジミは飼育時の代用食としてニセアカシアの花を食すことからも意味深い花である。
ニセアカシアの満開時にはオオルリシジミの発生が始まり、ニセアカシアが末期のころオオルリシジミは最盛期を迎える。
オオルリシジミは♂が発生するとクララの花穂にこだわり、 まだ開花しない花穂の先端に静止して夜を過ごすほどである。
1週間前後♀が羽化するのを待ち、交尾が終わるとクララの先端の主は♀のオオルリシジミに代わる。
♂はそれでもクララに執着しているのか、♀の行動を見ているのか、クララの周囲の雑草に静止して夜を過ごすようになる。
一方♀は交尾後、体内での熟成を待ち、産卵まではクララの先端に静止して夜を過ごすようになる。
ギフチョウの採集の往復時に中央自動車道、関越自動車道などでニセアカシアやフジの花などの開花状況を見ていると、開花はかなりの勢いで北上しており、オオルリシジミの発生が間もないことが感じられる。

私はギフチョウの採集が6月上旬までは間違いなく続くと思われるが、オオルリシジミの発生で、絶滅と言われている新潟詣でが始まりそうである。

飯山市ではオオルリシジミの希少性を知る観察会が[北信越の里山を保全活用する会]などの主催で、小中学生と保護者が対象で6月9日と16日、午前9時から正午まで開催される。
希望参加日を事務局の市公民館
℡0269*62*3342
に5月31日までに申し込む。
同会では、地元の自然の素晴らしさを知り、残していってもらいたい、と。

希少性と併せて、シジミ類では綺麗な蝶 であり、子供たちにはぜひ見てもらいたい蝶である。

申し込み時長野県民、飯山市民でない方は、一応参加可能かの問い合わせをした方が懸命である。

2013年4月11日 (木)

ギフチョウと ヒメギフチョウ

あなたはギフチョウ派?ヒメギフチョウ派?

25県の広範囲に生息するギフチョウに対して、ヒメギフチョウはわずか7県、北海道を含めても7県1道にしかおらず、さらに生息県として含めてある山梨県は鹿にウスバサイシンを食べ尽くされ、全く姿さえ見られない壊滅状態に陥っている。

普通に考えれば生息地が少なく、個体数が少ないヒメギフチョウの方が希少であり、採集意欲を掻き立てられるのであろうが、何故かギフチョウ人気にはかなわない。
ギフチョウは地域変異、個体変異が多いからだと言う人も多いが、このような人たちがはたして何産地のヒメギフチョウを見ているだろうかと疑問に思えてならない。

例えば八ヶ岳山麓の諏訪神社の森に生息する個体群はヒメギフチョウとしては最大型個体群であり、逆に青柳駅裏や蓼科湖周辺の個体群は最小型個体群でありながら黄色が濃く、まるでギフチョウのような色彩をしている。また、多産地の伊那市小黒川林道沿いに点在する生息地では稀にイエローテ―ルや白化型も出現している。
戸隠山系の近くに位置する一夜山麓の個体群は、天然記念物の群馬県赤城山麓の個体群に酷似し、裏面赤班がブロック状で競り上がる特異な個体群であるが、同時期に同地域で天然記念物のクモマツマキチョウが発生していることから、西岳林道での採集は誤解されないようにしないと、監視員にチェックされてしまう。ヒメギフチョウ街道と呼ばれる国道20号・甲州街道沿いに点在する生息地は 4月中旬から発生が始まり、最高標高地点の生息地、白樺高原国際スキー場脇、蓼科牧場周辺では5月下旬から、年によっては6月初旬に発生することさえある。
今年は桜の開花が早く、諏訪湖周辺、諏訪盆地でも桜のつぼみは色ずき、陽当たりの良い中央自動車道沿いでは開花の始まっている木さえみられる。

この地域で発生の早い岡谷市の高尾山では4月20日頃には発生が始まるのではないだろうか。     追いかけるように茅野市青柳周辺の発生が始まり、4月下旬に最盛期を迎える山並みまで至る生息地での発生が続き、5月に入ると高ボッチから崖湯周辺、八ヶ岳山麓の生息地となる。
ヒメギフチョウ採集で、生息地にこだわらず、間違いなく採集したい人向きの多産地は、八ヶ岳山麓の諏訪神社の森、 伊那市の釜無山麓、入笠山麓の小黒川林道、半対峠、岡谷市の高ボッチ山麓、崖湯周辺などがお勧め生息地である。
また、変異の見られる希少生息地を求めるなら、茅野市の蓼科湖周辺、東急リゾート、小諸市の布引観音、富士見町の青木の森別荘地、花場などであり、最希少生息地であり、探索してみたい生息地は山梨県の櫛形山登山道で、丸山林道との分岐点ちかくの防火帯周辺に発生地がある地域である。
来週末にはヒメギフチョウの発生も始まりが、ヒメギフチョウの場合、裏面に特徴のある生息地も多いことから、複数採集されたら、ぜひ少しは裏展翅をしてみると意外な発見がみいだせるのではないだろうか。

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2013年4月 6日 (土)

タテハ類の♂♀の見極めかた!

大半の蝶は班紋や色調が異なり、♂♀の区別は容易にできる。 しかし、タテハ類にはスミナガシ、キベリタテハ、クジャクチョウ、ヒオドシチョウ、アカタテハ、ルリタテハなど一見しただけでは♂♀の見極めができない種類も少なくない。
翅の大きさ、体の太さなどを参考に♂♀を決めている人も多く、腹部を確認して見極めている人は以外に少ない。

こんな♂♀の判別が難しい種類も簡単な見極め方がある。

採集した個体を腹部側から翅が垂直にた立つように、親指と人差し指で持ち、蝶が真っ正面になるようにして近くでみると、指で持っている蝶の体の幅に蝶の目が収まっていれば♂。
体の幅から目がはみ出すように、体の幅に収まっていない個体は♀である。
しかし、この判別法は採集時から展翅するくらいの間で、展翅して時間が経過してしまうと個体の体も乾燥して縮んでしまうことから判別は難しくなる。

ギフチョウシ―ズンの本格的な時期を迎え、連日ブログ購読者が、採集地の案内や採集方法などを聞きに楽しみに店を訪れてくれる。
私も天気が良いと連日採集に出掛け、夜の営業時間には間に合うように帰宅しているが、交通渋滞などに巻き込まれることも考えられる。
できれば前日にでもご予約を頂き、携帯電話番号などをお知らせ頂ければ、最悪の場合でも無駄足にならないようにご連絡ができる。

蝶屋営業時間
月曜日〜金曜日
19時〜22時
最長 24時 まで!
新潟県は日本海側の生息地では各種スミレ類が咲き、カタクリは八分咲き、残雪も少なく来週には各地から発生の報告が入るものと思われる。

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2013年4月 3日 (水)

オオルリシジミ!続編

オオルリシジミ!続編

オオルリシジミ!続編
オオルリシジミは長野県では5月下旬から、新潟県では6月初旬から、年1回発生する。
最初に♂が発生し、 1週間前後遅れて♀が発生する。
最初に発生した♂はクララに執着し、まだ花穂も出揃わないクララの先端に静止している個体が多く、夜もそのままクララの先端で過ごす個体が多い。

♀が発生し交尾が終わると、♂はクララから離れ、夜などもクララの周囲にあるスゲ科などの植物を好んで夜を過ごす。
交尾が済むとクララの花穂には♀が執着し、夜も花穂に静止して夜を過ごすが、雨など悪天候の時はクララの幹、根元に近い位置に移動している。
つまりクララの先端を占領しているのは発生初期は♂、最盛期以降は♀が占領している。
交尾が済んだ♀はクララのまだ固そうな花穂に1卵ごと産卵し、数卵産卵するとひととき吸蜜などしながら休み、再度産卵を繰り返す。 成長し、開いた花穂には産卵を嫌がり、脇から成長した若い花穂に産卵する。

卵は10日前後で孵化し、花穂を食し成長する。
3齢になる頃にはクロヤマアリやクロオオアリなど多くの各種アリ類が、幼虫から分泌される蜜を求めて集まり、幼虫の近くにくるアシナガバチやハエなどに攻撃をし、幼虫が保護されることから、天敵から身を守る一手段と考えられる。
ムモンアカシジミやキマダラルリツバメなどアリと共生する種類のような、幼虫とアリと特異的な深い関係はないようだ。
成熟した幼虫は赤みを帯びてくるので同じクララを食草として育つルリシジミとの判別は容易である。終齢幼虫は蛹化場所として、一般的に言われているような地面に潜ることは稀で、クララの根際や石のすき間、地表などで蛹化している。

オオルリシジミの吸蜜源はアカツメグサ、ハルジョオンを好むが、シロツメグサ、クララ、セイヨウタンポポ、カラスエンドウ、アヤメ、ナワシロイチゴなど意外と訪花植物は多く、自生していればミヤコグサ、人家の庭先などのヤグルマソウの花も好んで餌源とされている。
また、地面から吸水している個体も多い。
発生初期の成虫は♂♀とも、交尾が終わるまでクララに執着し、日中吸蜜に移動しても夕方になると発生地のクララ周辺に戻ってくる。
しかし、交尾が済み、産卵が終わると発生地のクララに執着することもなく、かなりの遠距離を飛翔し、草地のような場所を好んで遊び場にしているが、周辺には必ずクララが自生している。
飛翔時、離れた場所や上空を飛翔している姿、飛翔法はモンキチョウの♀そのものである。

撮影希望者は交尾が行われる時間帯の昼過ぎから夕方がお勧めで、この時間帯にはクララの先端で翅を広げる個体や、色々な仕草を見せてくれる個体のシャッターチャンスとの出会いが楽しめる。

2013年3月29日 (金)

オオルリシジミ

オオルリシジミ
ギフチョウ!ギフチョウと騒いでいたら、たまにはほかの種類にも触れろと言われて、春の蝶と言えばヒメギフ、ウスバシロとなるが、何回も触れてきたので、今回は私の最も好きなオオルリシジミを!

オオルリシジミは現在熊本県の阿蘇山と長野県の安曇野市と東御市の北御牧地区のみしか見られないと言われ、さらに北御牧地区では1990年代には絶滅されたと、安曇野市でも1996年に絶滅したと言われ、それも採集者の採集圧と言われてきた。 確かに卵採集のために、産卵された時期に生息地のクララの花穂を全て切り取られ全滅したという生息地、たとえ上田市の下之郷などは地元の農作業をされていた方々が驚いたほどの荒業であるが、オオルリシジミの絶滅と言われる原因は採集圧より、農耕地の区画整理で畦道などに自生していたクララは根こそぎ掘り起こされ、また、千曲川流域は国から地元に払い下げられ、時を同じくして農耕具の開発で草刈りが鎌から草刈り機に代わり、それまで地元では「蛆(ごうじ)殺し」と言われたクララは、手で触ることを嫌がり鎌では刈り取られることがなかったが、機械では一網打尽。クララの人為的な作業による減少。

さらにりんご畑などへの消毒により周辺のクララでは幼虫は育たない。好生息地があった小諸市は関越自動車道のIC新設場所に、それに伴う道路新設などで壊滅的な打撃を受けたなど人為的な要素が第1の原因である。

北御牧地区を含め、本州では絶滅と騒いでいたが、絶滅と騒いでいた信州大学や北御牧地区の人たちがどのくらいオオルリシジミに関心をもち、どのくらいの年月調査をしていたか疑問であり、少なくてもオオルリシジミの生息地探索、生息調査は私のほうがはるかに長く、深く、長野県が絶滅を騒がれていた年月でもわずかながら生息はしていた。

そもそも北御牧地区にしても、私が多数の生息地を発見し、採集に行っていた当初は地元の人たちは大きなネットを持ち、農耕地の回りを歩く私を不思議な目で眺め、農作業をしている方々とはいつの間にか話をするようになり、クララの自生地を教えてくれ、畦道などの草刈りの時、クララは刈らないでくれるようになり、蜜月関係を築きながら毎年オオルリシジミの発生時期に会うのを楽しみにしていたほどである。 絶滅を騒がれている年代も北御牧地区を始め、佐久市、上田市、北佐久郡立科町から上水内郡信濃町、新潟県妙高市などには生息地があり、絶滅などはしていない。
東御市の保護活動には幾つかの問題点はあるが、北御牧地区周辺の個体数が増えた素晴らしい実績は大いに認めるべきである。

オオルリシジミの最大の天敵は卵に寄生するメアカタマゴバチであり、またクララを丸坊主にしてしまうウスベニオオノメイガであろう。
蛹では、クララの根元の枯れ葉を取り除かないままの野焼きで熱に耐えられなく死んでしまう人為的な気配りのない作業。さらにクララの根元で羽化し、クララの茎を登り翅を伸ばす前に、茎につく泡虫の泡に捕まってしまう個体、無事に成長し、飛翔できるようなってもアブやオオシオカラトンボに捕まってしまう個体など天敵も少なくない。
オオルリシジミに関しては書き終わることがないほど、習性から探索時期の思い出などつきないので、また、機会があったら続編をと思いつつ今回はお・わ・り。

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