

私も多くの人と採集を共にしてきたが、これほど優雅な?採集をする人をみたことがない。
優雅と言えば聞こえはいいが、私にすれば考えられないほどタブーな採集時間帯での行為である
私と出会い、最初にネットを持ったのは3年前の正月、ランカウイ島であった。 それ以来いきなり蝶採集にはまってしまい、今では私を上回る年間250日前後採集に行っているのが、今ではすっかり全国区になってしまった後藤まる美さん。 海外であろうが、国内であろうが、必ずハンモックを持参して採集地で張っているのだ。
ただ、張る場所は何処でも良いという訳ではなく、今が時期のギフチョウ採集時なら、朝はギフチョウの寝床となる樹木が一望できる場所。
ハンモックに横になり、樹木の枝先や梢をギフチョウが旋回し、体を温める活動が始まるのを待っているのだ。
これは非常に素晴らしいアイデアであるが、ギフチョウが活発に活動を始める時間帯になってもハンモックで横になっている
特に希少産地ではギフチョウが次々に飛び出してくる訳ではないので、待ちくたびれてハンモックに乗っての待機である。
飛翔するギフチョウが目に飛び込んできてから急いでハンモックから降りても間に合うことは稀にしかないことは明らかである。
こんな行動を何回目撃したことか。
多産地ならいざ知らず、1日に何匹かしか出会えない希少産地ではたまったものではない。
ハンモックから降りてまるちゃんが歩き回る時のハンモックの主は愛犬【うた】である。
まるちゃんがいない間はうたがハンモックから飛び降りることもなく、おとなしく、主同様に横になって待っている。
まるちゃんは私主催のツアーにはほとんど参加し、当初は同行メンバーも女性の採集者である物珍しさ、同行することを楽しんでいたが、最近のまるちゃんは【後藤まる美恐るべし】とライバル扱いである
確かに私が知る範囲でも、採集の上手い人、上位5人には入るくらいセンスが良い。
採集が上手いというのはネットインが上手いということばかりでなく、基本的には蝶を見つける目、すなわち環境を見る目である。
大半の人は狙う蝶が目に入った瞬間にはネットを振っている。確かに素早く飛翔 している個体はタイミングで素早く、的確にネットを振らなければならないが、吸蜜活動中や、吸蜜源、産卵の食草などを探し求めて穏やかに飛翔している時でも、見た瞬間にネットインしてしまう人が大半であるが、私は機会がある度に口にする【ワンテンボ遅らせろ】と言うのは、ワンテンボ遅らせることにより周囲の草花、環境が自然と目に焼きつき、この蓄積が蝶を探し出す環境を自然に身に付けているのだ。
ただ歩き回って蝶を探すのではなく、環境を探しだすということが蝶採集の上手さである。
環境が分からないと、歩き回っていても蝶がいなければ通過してしまうが、環境が読めると待機して蝶との出会いを待てるのだ。
採集時の道中「柿さんは、採りかたも教えてくれない」とよくまるちゃんに言われるが、昔のお弟子さんたちが、【師匠から盗め】と技や仕草を見て自分のものにしたというが、正に私と採集に同行していて私の行動をチェックし、さらに蓄えられた目、蓄積されている根拠に基づく勘が優れているのはまるちゃんが際右翼であろう。
写真はハンモックで休むまるちゃんとうた。
ギフチョウが寝床としている杉の大木。
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